家がほしいと思ったとき、購入予算はどのように決めていますか。
家って、あまりに大きな買い物過ぎて、一体いくらまで買えるのかって、直感的に考えるの難しくないでしょうか。
住宅ローンが、今の家賃より同等であればよいのか。少し高くなったとしても大丈夫なのか。どのように皆さんは考えているのでしょうか。
今回は僕が購入するときに考えたときの考え方を紹介します。ライフシミュレーションのように詳細に検討していくものもありますが、それよりは簡単に計算する方法を紹介します。
住宅ローンに対する一般的な考え方
住宅ローン自体は結構な額まで借りることができると思います。
例えば、じぶん銀行の住宅ローンシミュレーターを使って、現在の年収から借入可能額を計算してみます。
「年収600万円、借入期間35年、金利0.6%」で計算するとすると
借入可能額が4540万円、毎月返済額が119,869円になりました。
ただ、それが本当に返すことができる金額かどうかはまた別です。生活が破たんすることなく、無理なく返すことができる金額は、借入可能額よりも少なく見積もるべきです。ただ、どのくらいまで払えるでしょう。
よく言われていることは、年収の5倍までの借り入れ、年収の20%までの返済額だとよく聞きます。この考え方でもよいのですが、何を根拠にしたものか、自分には合った考え方なのか、まったくわかりませんよね。
家の購入額は、自分の今後の人生を考えたうえで、金額を決めるべきですよね。もう少し考えてみましょう。
人生の収支から考える簡単に計算する方法
ファイナンシャルプランナーが考えてくれるライフシミュレーションをいきなりやってみるということもいいと思います。ただ、結構面倒です。詳細に詰めようとすると、手間がかかります。自分の人生のプランなのですから、もちろんやったほうが良いのですが、もう少し単純に考えてみます。
僕の計算は以下の方法です。
家を購入できる金額 < 人生における収入 - 人生における支出
要するに、生涯受け取れる収入から、人生にかかる支出を引き算して、残った金額が家を購入できる金額です。単純ですね。でも、年収の5倍とか、20%とかよりは、もう少し現実的な金額がでてくると思います。
この後は人生における収入と支出についての考え方・決め方を紹介します。
人生における収入
日本人の平均寿命は、男性で81歳、女性で87歳となっています。
なので、ここでは90歳まで生きた場合を想定していきます。もちろん100歳まで生きる方もいるですが、ここは日本人の平均寿命までを生きた場合を考えていきます。
それ以上絶対に生きる!という方は、別途計算してみてください。
給与総収入
もしサラリーマンであれば、現状の収入が定年まで続いた場合に、どのくらい収入が得られるかを計算してください。自営業の方は予想される金額になるのかなと思います。
例えば
30歳、年収手取り400万円であれば、定年まで残り30年あるので、
30年✕400万円=1億2000万円となります。
簡単ですね。ただし、計算は手取り年収ですることに注意してくださいね。
ただ、年々昇給することも考えるとすると、生涯年収はもう少し多めになるのではないかと予測されます。一般的に、生涯年収は2.5億と言われているため、結構差がありますね。平均なのでお金持ちも含めていると考えると、もう少し小さい値が中央値(真ん中の人の年収)になりそうです。また、定年後再雇用で、手取りが減額されたとしても、これも年収に追加してよいかと思います。
例えば、大学卒業してから、定年後再雇用されて、65歳まで働いたとしたら、という前提で、年収の全国中央値の各年代の合計を計算してみると、1億7567万円となりました。
退職金
定年退職したときなどに会社から受け取れる退職金についても収入の一部として計算しましょう。勤務している会社で受け取れる退職金を調べて計算しましょう。
ちなみに、厚生労働省「退職給付(一時金・年金)の支給実態」では、退職金の平均は以下のようになっています。
経歴 | 定年 | 会社都合 | 自己都合 |
大学卒・大学院卒 | 1,983万円 | 2,156万円 | 1,519万円 |
高校卒(管理・事務・技術職) | 1,618万円 | 1,969万円 | 1,079万円 |
高校卒(現業職) | 1,159万円 | 1,118万円 | 686万円 |
大卒で定年まで働いたとすると、平均で1983万円もらえることになります。
年金
国民年金は、20歳から60歳までの40年間に払い続けると満額を65歳以上から受ける取ることができます。また、会社員や公務員の方は、国民年金に加えて、厚生年金も受け取ることができます。
国民年金の満額は現状では年間で77万9,300円になります。また、厚生年金は年収などにより様々で満額にすると300万円ほど。厚生年金と国民年金を合わせて平均受給額は月15万円になりますので、年間では180万円が平均受給額になります。
65歳から90歳までもらえるとすると、4,500万円は受給できる計算になります。
住宅ローン減税
住宅ローン減税はローンに借入額に応じて、その1%の所得税が戻ってくる制度です。なので、借入額やその時の所得税(+住民税)の額に応じて計算する必要があるので、結構ややこしい計算をする必要があります。
住宅ローン控除(減税)シミュレーションを使ってざっくりと計算してみます。
「年収600万円、妻子供3人、借入額3500万円、金利0.6%、返済期間35年」とすると、
10年間の控除額は、203万円になります。住まいの給付金を入れると、233万円です。
総収入に入れても微々たる金額なので、これを収入に含めて考えるかどうかはお任せします。
児童手当
子供がいれば、中学校卒業まで、児童手当を受けることができます。
自動の年齢 | 児童手当の額(一人あたり月額) |
3歳未満 | 15,000円 |
3歳以上小学校終了前 | 10,000円 (第3子以降は15,000円) |
中学生 | 10,000円 |
中学生までの間、約210万円(第3子は約270万円)もらえることになります。誕生月により多少減ったりしますが、大体このくらいです。
扶養控除
収入ではないですが、収入として考えましょう。詳細はここではお話ししませんが、年間で38万円の収入となります。定年まで30年もらえたとすると、1,140万円になります。
投資(太陽光発電)
とらぬ狸の皮算用で、投資を収入として考えていいものかとは思いますが、これを入れておいてもよいと思います。太陽光発電など、一定期間の収入が確実に見込めるのであれば、これを含めてもよいです。
ただ、あまりに不安定な収入の場合は考慮しないほうが良いかと思います。
人生における支出
ここからは支出を考えていきましょう。人生におけるすべてに関わる支出です。細かく調べることもできますが、ここではざっくりとした計算をすることにとどめます。例えば、スマホの通信費などは、生活費などでざっくりいくらくらいの範囲、ということで計算します。
生活費
家計簿をつけていて毎月の生活費が分かる方はそれをもとに計算してもらったほうが良いです。もし家計簿をつけていない方は、全国平均から生活費を検討してみましょう。
家計調査報告によると、住居費を除く消費支出の月平均は、227,603円になるようです。これを、30歳から90歳になるまで継続した場合、163,874,160円(1.6億円!)となります。
生活費を節約すれば、もちろん低くすることができますので、一番良いのは今の実態を把握することです。
教育費
子供の教育費も考えてみます。
文部科学省の「平成28年子供の学習費調査」によると、幼稚園・小学校・中学校・高等学校にかかる教育費は全国平均で、以下の表になります。
公立 | 私立 | |
幼稚園 | 233,947円 | 482,392円 |
小学校 | 322,310円 | 1,528,237円 |
中学校 | 478,554円 | 1,326,933円 |
高等学校 | 450,862円 | 1,040,168円 |
全てが公立校だった場合でも、149万円かかることになります。全て私立だった場合、438万円という費用になります。これは子供1人当たりの金額であるため、2人以上であれば、これよりさらにかかることになります。
また、これに加えて、習い事・塾などに通うことになると、追加で費用が掛かりますね。必要に応じて、別途計算してください。
また、大学卒を目指すなら、さらに費用が掛かります。それぞれの大学によっても異なりますし、学部などによっても異なります。
日本政策金融公庫の実態調査によると、国公立大学の総費用は539万円、私立大学文系では731万円、私立大学理系では827万円かかっている。
また、大学生活に下宿費用などの生活費についてもかかります。ベネッセの記事によると、自宅外の下宿では、月額で9万1000円になるようです。4年間通ったとすると、437万円かかることになります。これは自宅通い、学生寮などではもう少し低くなります。
これらをすべて合計すると以下のようになります。
- 全て公立校+国公立大学+下宿=1125万円
- 全て私立校+私立大学理系+下宿=1702万円
大学も自宅通いになれば、以下のようになります。
- 全て公立校+国公立大学+下宿=688万円
- 全て私立校+私立大学理系+下宿=1265万円
老後への貯蓄
これは、特別に計算する必要はありません。生活費と年金のうちで不足分が老後に向けて必要な費用ですが、それはすでに上記の項目で計算されているため、ここでは特別には計算しません。
車の購入
都心部に住んでいればあまり関係ないかもしれませんが、田舎に行けば車は必須のアイテムになります。そのため、生涯にわたって、その費用を払っていく必要があります。購入金額、維持費、車検費用など多岐にわたるため、ここでは細かいことは計算しないこととします。
車にかかる費用は生涯で約4000万円! [税金] All About
上記の記事によると、20歳~70歳までの50年間で、約4000万円が必要になるようです。
ただ、これには駐車場代が含まれるため、再計算します。戸建てを建てれば、その土地に駐車場を作るという想定です。この想定が異なる場合は、そのままの価格としてください。
- 車の購入費用・・・210万円÷7年間✕50年間=1500万円
- 車の維持費・・・33万円/年間✕50年=1650万円
合計で、3150万円となりました。
大型出費
旅行に行くことを計画していたり、冠婚葬祭関連の費用が別途あるかと思います。 友人の結婚式に行くことや、子供の結婚費用なども考えるともありますので、個別に計算をしておいてください。ここでは代表的に、自分たちの結婚費用と、親族の葬儀費用を計算します。
結婚関連費用・・・466万円
参考:結婚費用の項目と相場|親ごころゼクシィ
葬儀費用・・・178万円
参考:お葬式に関する全国調査
ざっと、700万円くらいで考えておくとよいかと思います。既婚者の方は、結婚費用を減らしておけば、178万円になります。
住宅のメンテナンス費用
住宅の修繕費や、毎年の固定資産税を払う必要があります。住宅に住む以上、避けられない出費です。
修繕費・・・10~15年で100万円
参考:住宅のメンテナンスに適切な時期や修繕費用の目安は? | 住まいのお役立ち情報【LIFULL HOME’S】
固定資産税・・・年間15万円くらい(土地や建物によって異なります)
参考:https://ienou.com/property-tax/
火災保険・・・年間10万円くらい
参考:https://ieul.jp/column/articles/406/
- 修繕費・・・100万円✕50年間÷10年=500万円
- 固定資産税・・・15万円✕50年間=750万円
- 火災保険・・・10万円✕50年間÷10年=50万円
80歳まで同じ家で暮らしたとして、50年間にかかる費用は、ざっと1300万円ほど。固定資産税は建物の価値が下がる分、低くなりますが、ここでは考慮せず計算します。
シミュレーション
それでは実際に計算していきましょう。購入者のデータを例に説明します。年収は昇給率も考慮しています。2%は全国平均から計算しています。
購入者データ | |
年齢 | 30歳 |
家族構成 | 配偶者(扶養) 子ども2人 |
手取り年収 | 400万円(年2%の昇給+再雇用で60歳時点の半分の年収を想定) |
学歴 | 大学卒 |
教育方針 | 子どもは国公立大学、自宅通い |
人生おける収入
項目 | 収入 |
給与総収入 | 1億8700万円 |
退職金 | 1983万円 |
年金 | 4500万円 |
住宅ローン減税 | 233万円 |
児童手当 | 210万円✕2 |
扶養控除 | 1140万円 |
貯金 | 1000万円 |
合計 | 2億8076万円 |
人生における収入は、2億7976万円となりました。今まで出してきた平均値を元に計算しています。
人生における支出
項目 | 支出 |
生活費 | 1億6387万円 |
教育費 | 1125万円✕2 |
車 | 3150万円 |
大型出費 | 178万円 |
住宅費用 | 1300万円 |
合計 | 2億3265万円 |
人生における支出は、2億3265万円になりました。支出についても同様に、平均値から出しています。
家を購入できる金額
それでは、家を購入する予算を決めましょう。冒頭で説明した通り、僕の計算は以下の方法です。
家を購入できる金額 < 人生における収入 - 人生における支出
これに上記で出した数字を当ててみましょう。
人生における収入 - 人生における支出
= 2億7976万円 - 2億3265万円
= 4711万円
結果、家を購入できる金額は、4711万円より小さい値であれば良いということになりました。逆にこれ以上家の購入にかかると人生プランが破たんすることが分かります。
実際は住宅ローンで支払うことになると思うので、35年0.6%の金利でローンとして借りた場合を見積もると、4200万円~4300万円の間の価格を借りることができる金額となります。この値は、400万円の収入がある家庭の約10倍程度となりますね。一般的に年収の5倍ほどが良いとされているため、その値より高めになってますね。年収が年々増加する、ということを前提としているためで、この前提が崩されると、計算結果は変わってきます。
また、4200万円の住宅ローンの毎月の返済は約11万円ほどになります。これは、年収400万円の約33%にあたります。これも、よく言われている20%の割合より多いですね。ただ、今回の計算は、その根拠とする数字がありますので、意味合いは全然違います。
僕の計算の最大のメリットは、自分の人生プランを設計し直すことで、家にどれだけかけられるかを調整することができるところです。支出に関しても同様で、どの支出を抑えるか、どこが増えるかを検討すれば、自動的に家を購入する金額も決められます。
逆に家を購入することを検討することで、今後の人生設計をすることもできるのです。ただし、注意して欲しいのは、このシミュレーションはあくまで予測です。人生は何が起こるかわかりません。いきなり仕事を失うかもしれませんし、急な出費が必要になる場面もあるかもしれません。
ここを越えてはいけない、最大の予算という観点でとらえてもらったほうが良いかと思います。
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